コロナウィルスの影響によりオンライン接客の需要が増えており導入を検討している事業者の方も多いかと思います。一言でオンライン接客と言っても、その方法は様々あるので事例を含め導入検討の際の注意点をお伝えします。
そもそもオンライン接客とは?
オンライン接客=ECではありません。
かつて小売業といえば店舗でのリアルな接客が当たり前でした。
IT革命以降、自社でECサイトを運営したり、またAmazonなどのプラットフォームで販売する事業者も増えてきています。ここでは実際に活用されているオンライン接客の方法をご紹介します。
ライブコマース
出典:https://live.shipsltd.co.jp/?live_id=NNevSAyPwp92MmZgtot5
ライブコマースとは、ライブストリーミング(生配信)で商品を販売したり、接客することを可能にする手法です。販売員やインフルエンサーが動画による生配信を行い、視聴している消費者は商品に関する質問をリアルタイムで行うことができます。
最新の商品情報の発信をプロのスタイリストや、憧れのインフルエンサーからリアルタイムで聞けることやコーディネートの質問などを即座に行えることがメリットとしてあげられます。
従来のECサイトでは伝わりにくい裏地の柄やサイズ感、服の後ろ側のデザインなどをコミュニケーションを取りながら確認できるため、よりリアルに近い感覚でこれまでにない消費体験を提供可能になります。
VRコマース
出典:https://voyagegroup.com/news/press/01_20170322_01/
VR(virtual reality)コマースとは、仮想現実を理工学的に創り出し、あたかもリアルな場にいるかのような感覚で購買体験を提供する手法です。
ユーザーはスマートフォンやVRグラス(専用眼鏡やヘッドマウントなど)を利用し、実店舗で消費体験をしている感覚で店内を見渡したり商品を選択することができます。
遠隔地に住んでいていて都心の実店舗に行けない方、バリアフリーの配慮が必要な方にも手軽に楽しんで頂けけるのでしょうか。
チャットサービス
出典:https://www.omni7.jp/general/static/helpomnitop
チャットサービスは、自社サイトや自社ECで消費者からの質問を受ける機能として実装される例が多い手法です。
事前に質問と回答を用意し自動で返答するチャットボットとして運用している例が多く、その内容は会員登録やサイト利用についてのQAがメインとなっています。事業者が専任スタッフを確保して、商品の詳細などについてコミュニケーションを取れる形での運用はまだ少ないのではないでしょうか。
サイト上での運用ではなく、LINEを活用し消費者とコミュニケーションを取り、URLで商品を訴求する形式で運用している企業もあり、スモールスタートには向いています。
EC/アプリのでの販売
出典:https://www.muji.com/jp/passport/
EC/自社アプリを活用している企業も多く見受けれます。
ECの運営は大きく分けると2つあり、自社で構築する方法とAmazonや楽天などのプラットフォームに出品する方法です。
自社で構築する場合はデザインから機能まで好み通りに設計することができますが、費用も工数もかかってしまいます。一方でAmazonなどのプラットフォームに出品する場合は膨大な工数はかかりませんが、プラットフォーム利用料が発生します。
自社アプリを運営する場合は、プッシュ通知やEC以外の機能も備えることが出来るのでユーザーとの継続した関係構築、顧客のロイヤルカスタマー化など、ECサイトには無いメリットが多数あります。
また、販売のみならずレンタルやサブスクリプション提供など豊富な機能を組み込めるのも魅力の一つです。
ここまでオンライン接客の種類について書いてきましたが、次章では実際に企業で取り組まれている事例をご紹介します。
オンライン接客の事例
オンライン接客事例1.BEAMS
BEAMS(株式会社ビームス)はオンライン接客やオムニチャネル化への対応といった、デジタルへの取り組みではとても注目されている会社です。
その事例を2つご紹介致します。
BEAMSのオンライン接客事例①
ライブコマース
約1時間の配信時間で6000人以上が視聴し、ライブコマースの配信ページを経由した収益を含むと100万円弱を売り上げました。
2020年3月27日(金)にビームスが初めてライブコマースを配信して大きな話題になりました。この頃、コロナウィルス感染症の影響で政府が外出自粛を呼び掛けていました。コロナウィルスが流行する前からライブコマースを考えていたようですが、コロナが追い風となりこの結果を導いたと言えますね。
また、初めてのライブコマースでここまでの成果を出すには、入念な準備やオンライン/オフライン問わず日頃からスタッフとエンドユーザーが信頼関係を築けているかといった点も重要な要因として考えられます。
BEAMSのオンライン接客事例②
出展:https://www.beams.co.jp/staff/
販売員によるコンテンツ発信~スタッフ2000人が情報と個性を発信~
もう一つの取り組みは、普段は販売などの業務を行っているスタッフが個々の個性を生かし、オンラインでもコーデや想いを表現する取り組みです。
メインの業務がある中でオンラインでも想いを乗せて発信することにより、エンドユーザーから信頼を得られ、更なる関係構築にいい影響があるといえます。
オンライン接客事例2.Snow peak
出展:https://www.snowpeak.co.jp/help/onlineconcierge/
アウトドアブランドの中でも一線を画すsnow peakもオンラインでの取り組みに挑戦しています。
スノーピークオンラインストアにて商品知識豊富なスノーピークスタッフがお客様のご質問・ご相談にチャットでお答えし、お買物をサポートさせていただきます。チャットは画面上でそのまま行えて、チャットの履歴も対応終了後にご自身のメールアドレスにメールを送信をすることでいつでも見返すことができます。オンラインコンシェルジュを活用して、楽しいお買物の時間をお過ごしください。(公式HPより)
snow peak の商品はどれも高品質で人気なのですが、かなり高価なのでECサイトで閲覧して購入するのはハードルが高いです。
オンラインでもしっかりプロの接客を受ける事が出来て、詳細に相談できるのは安心です。
オンライン接客事例3.資生堂
出展:https://netshop.impress.co.jp/node/7859
資生堂は
世界88の国と地域で展開している「SHISEIDO」を、ビューティーコンサルタント(BC)が化粧品や美容法を紹介するライブ映像を配信。消費者がリアルタイムでBCとコミュニケーションしながら商品を購入できるライブコマースを行う。
化粧品を選ぶ際は、肌質やトーンなど合う合わないの判断が難しいので、専門知識をもつビューティーコンサルタントに相談出来る事で不安の解消につながります。
また、同社が運営する「ワタシプラス」から、一人ひとりにあわせたメイクテクニックを提案するオンラインサービス「ワタシメイク分析」が登場し今後もオンライン接客の発展が期待されています。
ここまでオンライン接客の概要、事例をご紹介しました。
最後に、オンライン接客を導入・検討する際の注意点をご紹介します。
オンライン接客導入の際の注意点
販売員の個性をオンライン上で表現
従来の店舗販売では、教育を受け専門知識や接客技術を備えた販売員が店頭での接客に従事していました。
オンライン接客を行う上で最も注意する(気に掛ける)ポイントは、「販売員の個性をいかに表現するか」だと考えています。
「あの店舗のあの販売員さんに聞こう」
「この販売員さんなら信頼相談して出来るな」
このように、顧客とコミュニケーションを取り信頼関係を構築するのはリアルでもオンラインでも普遍の重要ポイントです。
先の事例でご紹介したように沢山の手法やツールがありますが、販売員の個性を十分に表現できる機能は十分備わっているか?を確認する事がオンライン接客を検討する上での注意点1つ目です。
購買への滑らかな導線
次に、顧客の消費体験の設計についてです。
UX(ユーザーエクスペリエンス)という言葉はよく聞くようになりましたが、オンライン接客を考える上でも要注意ポイントです。
例えばオンライン接客の事例でご紹介したライブコマ―スを例に考えてみましょう。
顧客はライブコマースを見たユーザーが自分で商品を調べ、ECに会員登録して発送先や決済情報を入力して、、、といったように初めの接点から購入確定までのプロセスが多く、また複雑だと途中の離脱率が上がってしまいます。なにより、顧客にとって便利なサービスとは言えないでしょう。
例えば、チャットで相談すると商品がレコメンドされ、タップすると商品詳細が見れてそのままカートに追加出来たら顧客はスムーズに購入する事が出来ます。
このように、オンライン接客を検討する上で「購買への導線」「消費体験の設計」は特に注意する点と言えます。
実店舗とシームレスな関係
最後に、実店舗(リアル)とオンラインの関係性についてです。
近年ECへの注力が進んでおり、コロナウィルスの影響でオンライン接客への移行はますます加速しました。
しかし、「店舗での売上をいかに伸ばすか」に注力していた事業者の多くは、ITリテラシーが十分とは言えず、付け焼き刃でオンライン接客に取り組んだ結果、リアルとデジタルがシームレスに繋がっていない例を見かける事があります。
例えば在庫連動や売上処理、消費者の顧客ID連携、ポイント制度など、多くの連携を検討する必要がある一方で、スピード感や開発コストの問題で不十分な状態でリリースをしてしまう例です。
ここで重要になるのが、消費者の体験を起点にサービスを設計することです。
消費者は利便性やデザインでサービスを選びます。システムの裏側は重要ではありません。注意すべきはリアルでもオンラインでも消費者に取って最も便利な接点で閲覧・購買を体験できるかです。家にいる時はスマホで閲覧したいし、外出している時は友達と店舗で楽しく買い物を体験したいのです。
オンラインとリアルでどちらの接点でも同じ様に高品質な消費体験を提供できるか、顧客にとって便利でデザインに優れているかの点もオンライン接客を検討する上での注意ポイントです。