時代や産業、市場のニーズによって様々な変化が起きていますが、小売の業態も同じ様に変化しています。
今回は、昨今米国を中心に話題を集めている新たな概念「DNVB」についてご紹介します。
市場が急速に成長しているECやD2Cの違いについても解説します。
EC・D2C・DNVBの違いとは?
先ずはそれぞれの特徴と、比較ポイントを概観していきます。
ECとは?
ECという言葉は今や当たり前の様に使用され、定義を改める機会はなかなかないと思うので、ここで定義を明確にしたいと思います。
EC(electronic commerce)とは、電子商取引と訳され、インターネット上でモノやサービスを売買すること全般を指します。
ECが生まれた瞬間についてはさまざまな説がありますが、1994年に米国のNet Marketというサイトでされた取引が最初のEC取引であるという考えが一般的です。日本においてはYahoo!が国内でサービスをリリースし、現在の楽天が楽天市場を開始した1996年頃を皮切りにECでの取引が加速していきます。
1998年には佐川急便が宅配事業を開始し通販の配送インフラが整備され始め、翌99年には「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!オークション」が同時にサービス開始しました。
ちなみに、現DeNAも同じく1999年にオークションサイト「ビッダーズ」を開始しましたが、その直後にYahoo!オークションが台頭し、また不完全な状態でリリースしてしまったことも相まり勢いを落としたのも業界では有名な話かもしれません。
いずれにせよ、場所や時間を問わない販売方法として現在に至るまでその市場規模は益々の拡大を見せており、更にコロナウィルス感染症による「巣ごもり消費」の影響を受け、市場の底上げは更に拡大しました。
そして2002年にはAmazonマーケットプレイス開始。2007年にはiPhone販売開始。楽天取引高5000億円達成。
その後、現在に至るまで飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきました。
D2Cとは?
D2CとはDirect to Consumerの略で、企業が自ら商品を企画・製造し、自社の独自の販売チャネルで、直接顧客に販売するビジネスモデルのことです。
ECがインターネット上でモノやサービスを売買すること全般を指すとお伝えしましたが、D2CはECに内包される部分があります。企業が独自の販売チャネルを設計しようとすると、現代において、それはインターネット上で売買を行うことと同意と言っても過言ではありません。
D2Cの概念や市場規模の推移、その背景にある消費者の価値観の変化などについてはこの記事を参照してください。
日本国内では2015年以降、米国では2010年以降D2Cの市場規模は急速に成長しており、アパレル・食品中心にブランドが乱立している事が伺えます。
DNVBとは?
DNVBとはDigitally Native Vertical Brandの略称で、デジタルネイティブ世代に対し、バーティカル市場(ニッチな市場)において商品やサービスを販売するブランドのことを指します。
D2Cと同じ様にDNVBもインターネット上での決済を伴うケースが多いので、ECに内包されると言っていいでしょう。
DNVB はD2Cのビジネスモデルの一つではありますが、商品(モノ)の訴求よりもブランドの存在意義や制作秘話、ストーリー、参加型キャンペーンなどの体験を得られるコンテンツ(コト)からターゲットの共感を獲得し、ブランド価値の向上を目的としています。これまでは「モノ」を購入してもらうためのマーケティングが主流でしたが、DNVBはブランドが提供する価値、体験といった「共感を得るコンテンツ」によるブランドコミュニケーションを通してブランドを作っていくモデルです。
EC→D2C→DNVBに移るにつれて、モノ→価値観にペイするようになってきていることが伺えます。
D2CとDNVBの違いをわかりやすく解説
上図の通り、D2CとDNVBには異なる点がいくつかあります。
ユーザー起点で最も大きな違いは、D2Cはデジタル上での共感が消費の動機で、DNVBはリアルでの体験が消費の動機になるという点です。
ECは店舗販売の延長線上にあるイメージが一般的ですが、DNVBはリアルがデジタルに内包されている状態とも言えます。
DNVBの事例3選
BONOBOS
2007年アメリカにて創業のメンズアパレルでDNVBの先駆者ともいえる存在。CEOアンディー・ダン。実店舗は試着目的でオンラインでのみ販売をおこなうという今ではスタンダードな方法を取り入れ大成功を収めた(のちに実店舗を拡大)。
Allbirds
米Time誌が「世界一快適なシューズ」と紹介したメリノウール(羊毛)から作られた、環境に優しいシューズブランド。CEOティム・ブラウン。
これまで靴に使用されることのなかった羊毛を持続可能な資源として着目し、再生可能エネルギーの専門家ジョーイ・ツウィリンジャーとともに、靴用に作られた革新的なウール生地の開発に成功。
Air Co.
商品販売前からInstagramに世界観や哲学を表示し、3000人近いフォロワーを集めたウォッカのDNVBブランド。
科学的にCO2から空気を作り、「空気と水と太陽のみで作られたウォッカ」という新たな商品を作り出すことに成功。
「CO2(二酸化炭素)廃止出量の増加による地球温暖化」という社会問題に着目し、CO2というネガティブな問題をポジティブに変換し、世界を変えていくことを目的としているブランド。
(事例参照元:https://note.com/ta9low/n/n97ac6a2cc51e#394Z2)