そもそもD2Cとは?

D2CとはDirect to Consumerの略で、消費者に対して商品を直接的に販売する仕組みの事を指します。

販売されるものはサービスではなくプロダクトで、行われている事自体が新しいわけではありません。

例えば農家の方が畑で野菜を作り直売所で消費者に直接売っていればこれもD2Cです。

では、なぜ最近D2Cが注目を浴びているのでしょうか?

その背景には、経済性重視の合理化が進められたことが挙げられます。

生産者が直接的に消費者にモノを売ると効率が悪かったため、大量に生産し組合や卸業者を通して販売していました。そこから何次にも卸業者が入り、流通業者が入り、最終的に店頭に並び消費者の元に生産物が届けられていたのです。そのため生産者の顔は見えず、思いも伝わらない。そして中間業者が多いが故に消費者が払う金額は高額になっていきました。

しかし、テクノロジーが進化し小規模事業者でも消費者に対して直接的に生産物を販売できるようになりました。

ここで注目したいのが、コストを削減だけがメリットでは無いということです。生産者の思いや開発のストーリーなど、情報と一緒に販売できるようになったことが革新的なポイントです。今までの小売業やECとの根本的な違いは、モノだけではなく情報と共に発信していることです。生産者がプロダクトを通じて解決したい課題や、プロダクトに対する思い、生産工程へのこだわり、生産に関わっている人々の姿など、直接的にしか伝わらない情報付加しているのがD2Cモデルの新しさと言えるでしょう。

次章では、D2Cビジネスの市場規模と代表的なブランドについてご紹介します。

D2Cの市場規模

参考:https://ecnomikata.com/ecnews/27562/

 日本国内におけるD2Cビジネスの市場規模

2015年時点での市場規模は13,300億円程度でした。

当時、5年前はまだD2Cという言葉を聞いても理解できる人は少なかったと思います。

2010年から2015年にかけて米国で先駆けてD2Cが加速し、その後日本企業の参入も見られました。

D2C企業のさきがけ的な存在として「Warby Parker 」がよく挙げられます。同社の設立は2010年でした。

Warby Parkerはペンシルバニア大学の4人の学生が、「いいメガネを手頃な価格で提供したい」という思いで立ち上げたメガネブランドです。高品質な製品、手頃な価格、ターゲットにマッチしたデザイン、無料試着、送料・返送料無料などのサービスにより、SNS経由の口コミなどで多くのファンを獲得しました。

2015年、ビジネス誌のファスト・カンパニーが選出する「最も革新的な企業ランキング」で、アップルサムスンなどを抑え1位を獲得しています。

 

日本国内だと、食のD2C「ポケットマルシェ」が2015年に設立しました。

全国の生産物を直接生産者から購入することが出来る「ポケットマルシェ」の運営をおこなうスタートアップ。”世なおしは、食なおし”、”都市と地方をかき混ぜる”がテーマである情報誌「東北食べる通信」編集長でもある高橋博之氏によって2015年に設立されました。

 

2020年8月には丸井グループ、オレンジページ、MAKOTOキャピタル、せとうちDMO、小橋工業、インスパイアPNBパートナーズを引受先とする8億5,000万円の資金調達を実施した。この調達を通し、C2C プラットフォームの拡充、生産者サポートの強化(SNS を活用した販売力強化セミナーなどのコンテンツ充実)、オンラインとオフラインの融合(OMO)、関係人口(地方から見て、その地域に関わる都市住民を含めた人々のこと。高橋氏の造語。)の創出促進を行うと発表しています。

【参考】D2Cアパレルの成功事例5選

D2Cアパレルの成功事例5選

 

日本国内でも徐々に資金が投入され始め、今後の加速も期待されている市場と言えるでしょう。

これ以降、日本国内でも様々なカテゴリーでD2Cブランドの設立が加速していきます。2020年には22,200億円と約市場規模は約2倍にまで成長し、更に2025年には30,600億円になるとの予測もあります。

次章では、なぜここまで急速に市場が成長しているかを概観していきます。

 

D2Cビジネスが加速する理由

ここまで、D2Cの市場規模の推移や代表的なブランドについて述べてきました。

急速成長を見せるD2C市場の背景について考えると、大きく分けて2つの「シンカ」が起きたという結論に辿り着きました。

 消費者の価値観の深化

参考:ジャパンネット銀行:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000229.000003984.html

D2Cビジネスが加速している要因として、1つ目は消費(生活)者の価値観が深化している事が挙げられます。

 心理的ネイバー消費

応援消費とも言われますが、「共感できるものにお金を払いたい」「自分の消費が誰かのに立てば嬉しい」といった価値観をもつ人が増えています。

経済成長が進み、生活する上で新しいものを買わなくてもそう困りません。そうなると、どうせ買うなら誰かの役に立つところに支払いたいと思うようにになるのです。”何を”買うかが重要ではなく、”誰から”若しくは”ストーリー”を重視して、そこに共感が生まれた時に消費活動が行われます。

共感が消費を生む例として、海外で徐々に事例が増え始めている”Pay as you feel”の考え方を少しご紹介します。

カフェやローカルマーケットで取り入れられている手法で、環境や教育など社会課題の解決に取り組む団体が取り組んでいる印象です。

面白いのは、支払い方法なので。

「お客様が支払う金額は、お客様が望むだけ」

メニューに価格の表記はなく、本当に感じた価値の分を払えばそれで良いのです。

それで経営が成り立つの?とツッコミどころ満載ですが、しっかりドライブしています。その理由についてはまた別記事で書こうと思いますが、お店の価値観やお金の使い道に共感してお客様が支払っているのは間違いありません。

参考:http://www.themagichatcafe.co.uk/what-is-pay-as-you-feel/

 

 テクノロジーの進化

もう一つの要因として、テクノロジーの新化が挙げられます。

かつては生産者が流通や小売の機能まで持ち合わせることが難しく、全行程を行う場合は路面店など極めて小さい規模でのみ可能でした。

経済の発展とともにより多くの方に販売することを目指し、生産者は生産に集中し流通や小売は他の専門事業者に分担されました。

効率性を高め、無駄なコストを削減し、利益を高めるために小売業全体が効率化されたと言ってもいいでしょう。

しかし、効率化が進む一方で生産者から消費者までの距離感は遠くなり、生産者が大切にしている想いや生産のストーリーを消費者が感じることはなくなってしまいました。また、間に仲卸などの中間業者が複数介入することでコストが発生し、店頭に並ぶ商品には商品の価値以上に多くの費用が上乗せされてしまいます。

かつては上述したモデルが最適と考えられていましたが、生産者から消費者に届くまで多くのコストや期間が発生するといった課題もありました。

 

先ず、ECの登場により生産者が直接消費者に”適正価格”で商品を届けれるようになりました。2000年以降、この波が加速します。

2015年頃にはD2Cブランドが登場し、”モノ”や”サービス”だけではなく”情報”も一緒に販売するようになります(ここでの”情報”とは生産者の想いやブランドストーリーなど”共感”の種になるものです)。また、ユーザー側が常にスマホ・SNSで情報を目にするようになったのも大きな進化だと考えています。

D2CビジネスはIT技術の発展なしには実現できなかったモデルと言えるでしょう。

 

D2Cの市場規模とその理由についてお読み頂き、いかがでしたか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

【関連】

D2Cアパレルの成功事例5選